被災者自身が撮影した浸水被害 台風19号

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茶色い濁流に覆われた真夜中の風景が、画面に広がる。目下のフェンスは水に埋まり、ごみが水面を流れていった。マイクがそばにいた人の不安そうな声を拾う。「(水かさは)どこまで行っちゃうんだろう」。越辺川の氾濫で一時孤立状態となった川越市の障害者支援施設「初雁の家」。職員の千田工さんが10月13日未明から施設内で撮影した動画の冒頭シーンだ。施設では台風に備え、12日のうちに約20人の利用者を別の場所に避難させた。同日夜に施設にとどまっていたのは千田さんを含め職員4人。周囲が浸水することは過去にもあったが、すぐ水が引くことが多く「今回も同じ」と思っていた。日付が変わるころに一度仮眠。しかし1時間後、「ゴーッ」という水の音と同僚の焦った声で目覚めた。屋外の見慣れた景色が茶色い濁流に覆われ一変。「いつこの状況から脱することができるのかと絶望に近い不安を覚えた」
 施設で災害時の記録や連絡を担当する千田さんは、カメラを向け始めた。施設内にゆっくりと入ってくる水、慌ただしく移動する自分自身。ボートでの翌朝の救助……。ドローンで四方を水に囲まれた「別世界」も空撮し、編集して約12分間の動画にまとめた。撮影時は興奮状態だったためか、「不安や恐怖心よりも、いま目の前で起きていることを撮影しなければと思った」と振り返る千田さん。「でも、いまは映像を見ると恐ろしい。寝るときに目をつぶると浮かんでくるんです」。自治体と水害対策について相談する際や、新しく施設に入ってくる職員に「水の怖さ」を伝えるための資料として、動画を活用できないかと考えている。
 東松山市早俣で浸水被害に遭った妻の実家を撮影したのは、熊谷市の大久保章さん。近くの小学校に避難する義母を妻と見舞った13日、水が引くのを待って訪れた際に撮影した。一番驚いたのは台所の窓の格子にプロパンガスのボンベが引っかかっていたこと。すぐに業者を呼び処分してもらったという。
 物置の屋根には一輪車がひっかかり、庭は流れてきたタイヤや大量の稲わら、丸太などで埋め尽くされていた。家の中は畳ごと水に浮き上がったらしく、すべての物がひっくり返り、重なって泥で汚れていた。

この動画について
URLhttps://www.youtube.com/watch?v=S0qHUqY4OAk
動画IDS0qHUqY4OAk
投稿者朝日新聞社
再生時間01:27

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